『時をかける少女』その5、「記憶の矛盾」の一解釈(まとめ)

しつこく「千昭が時間を戻したあと、真琴が数字が0になったことを記憶しているのはなぜか?」について。


冒頭の野球の夢にすでに伏線が張られている。
予備知識無しにこの映画を見た人は、真琴が目を覚ますまでは誰も夢だとは気づかなかっただろう。つまり、真琴の夢は映画の中の現実と区別がつかない。
もうひとつ重要な点として、目覚まし時計のことがある。夢の中で目覚まし時計が真琴の頭めがけて落下してくるのは、実際に目覚ましが頭にぶつかって目が覚めるよりも前。つまり、真琴は正夢=予知夢を見ることがある。
# 夢の中にデジタル数字の列が現れるのも、今日この日にタイムリープすることを予知していたのだ。


功介の自転車を追いかけて30分以上も走った真琴は、踏み切りに到着して事故が起きてないのを知り、気がゆるんで眠りに落ちた。普通ならすぐに目を覚ますところだが、その直後に時間が停止したためぐっすり眠ることができた。つまり数字が0になった前後の出来事は、真琴の(千昭が時間を戻さなければ起こるはずだった出来事の)予知夢である。目を覚ましたあと夢を見ていたことに気づかなかったのは、あまりにも真に迫っていたのと、千昭の話と夢の内容が符合したから。

時間停止能力について

記憶の矛盾に関連して「千昭は真琴とちがって時間を止めることができる。だから千昭が真琴と一緒にタイムリープできたり、あんなことやこんなことができても不思議でない」というようなことを言う人がいるが、実は真琴も時間を止めている。
最後のタイムリープで理科実験室に到着したとき、ノートが数秒間空中に浮かんでいて、真琴がノートに気づいて初めて落下した。このことから時間停止できるのは、タイムリープで到着したときと考えられる。


千昭が事故後の未来から到着した瞬間に時間が止まった。真琴が踏み切りに到着したときと、時間停止してるときとで踏み切り前の人たちの顔の向きが違う(4月21日の日記参照)のは、千昭が真琴の踏み切り到着以前にタイムリープして来ていて世界が改変されたからではなく、すでに夢が始まっていて真琴の夢の細部がいいかげんだから。


真琴が最後のタイムリープで戻ったのは最初の7月13日の放課後だった。本来、その日は3人連れ立ってグラウンドに向かったはずなのに、校庭で待ってたのは功介だけで千昭は一人で先に行ってしまっていた。この13日は、それまでと違い真琴が時間を止めたので、誰かがチャージしてしまったことに千昭が気づいた。だから千昭が「イライラして」、一人で考えたくて先に行ったのだろう。

『時をかける少女』その4(ネタバレ)

2ちゃんねるの「時かけ」スレとかを参考にしてFAQを作ってみました。
もちろん、これが絶対正しいというわけではなく「オレ解釈」ですが(特にA5、A7、A10)。


Q1:タイムリープすると、身体ごと時間移動するの?それとも精神だけが移動するの?
A1:真琴の場合は精神だけが時間を移動し、その時点の身体が精神にひっぱられてテレポートしているように見える。身体ごと時間移動するとした場合、服が変わるのがおかしい。ただし、疲労感はタイムリープ前の身体から持ち越される。
千昭は身体ごとタイムリープできるはず。


Q2:タイムリープはどの時間にもいけるの?
A2:真琴の場合は、自分にとっての過去にしか行ってない。最初にプリン食べに戻った後の、台所(12日)→川原(13日)も真琴の主観では過去に戻ったことになる(川原にいた時点のほうが過去)。
千昭は自分が生まれる前の過去や、未来へも行けるはず。


Q3:タイムリープすると時間線が分岐して、複数の宇宙が生まれるの?
A3:そうはならない。リセットされて、タイムリーパーが認識する世界だけが存在する。ただし、一度無かったことにした時間線でもタイムリープによってやり直すことができる(真琴の最後のタイムリープ)。
タイムリープによって宇宙が分岐するとすれば、千昭が功介を救うためにタイムリープしても功介が死んで真琴が泣き喚く世界はそのままということになって、千昭が最後の一回を使う意味がない。


# 真琴の最後のタイムリープは単に直前の7月13日を目指したのではなく、千昭と出会った日までいったん戻ってからそこで着地せずに時間の流れにそって早送りして、改変前の7月13日に到着したのだろう。


Q4:魔女おばさんは真琴が無かったことにした時間線の出来事を記憶してるの?
A4:していない。


# 真琴に「功介君が好きなんだと思ってた」と言ったときは、以前「千昭君が好きなんだと思ってた」と言ったことを覚えているはず。終わりのほうで「どちらとも友達のままだって思ってた」と言ったときには、「功介君が…」も「千昭君が…」も覚えていない(言ってない)。


Q5:千昭がクルミをなくす前の時点にタイムリープしなかったのはなぜ?
A5:千昭がそうしなかったということは、あのクルミは一人一回しかチャージできないということなのでは。その場合、回収はできても未来に帰れなくなってしまう。


# 「よくある質問」ではないが、「功介の事故のあと、千昭は未来に行ってチャージしなおしてから事故の前にタイムリープすればよかったのに、何故そうしなかったのか?」という疑問の答えにもなる。未来社会でも無制限にタイムリープできるとは思えないし。



Q6:真琴の腕のカウンターの数字が01に戻ったのはなぜ?
A6:千昭が、真琴が最後の1回を使う前に時間を戻したから。


Q7:千昭が時間を戻したあと、真琴が数字が0になったことを記憶しているのはなぜ?
A7:数字が0になった前後の出来事は、真琴が時間停止中に眠っていて見た夢だから。
千昭が真琴を伴ってタイムリープして、真琴から功介の死の記憶を消したという説もあるが、何故そんなややこしいことをしなけらばならないのかわからない。


Q8:真琴の最後のタイムリープの後、功介が「彼女」のことを覚えてないのはなぜ?
A8:真琴が戻ったのが、功介と「彼女」がくっついた7月13日ではなく、一番最初の7月13日だったから。


Q9:最終的に、高瀬君の不幸はどうなったの?
A9:真琴が天ぷらなべを燃やした7月13日に戻ったので、あわてて消火器の扱いをあやまることもなく、イジメの標的になることもないはず。


# 映画では省略されているが、真琴の最後のタイムリープの前の「戻りすぎた!」13日にも調理実習はあったはずで、そのときも真琴が高瀬に天ぷら揚げさせたとは考えにくいので、高瀬の問題と友梨のケガの件はその時点で解決してるはず。



Q10:「未来で待ってる」ってどういう意味? 
A10:数年後の未来にまた来るということ。


# 過去の人間にタイムリープの存在を知られてはならないというルールを犯した千昭が、もう過去に来れないとしても、千昭がこの時期に来る前に絵を探しに数年後(2010年ごろ)に来ている可能性はある。


こんなとこかな。後で修正するかも。

『空中スキップ』ジュディス・バドニッツ、岸本佐知子・訳(マガジンハウス)

空中スキップ

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このまま奇想コレクションや異色作家短編集に入ってもおかしくない、ヘンな短編集。
どっかで読んだようなネタを扱ったものも少なくないが、アイディアが全てではなくて人生のつらさ、厳しさが漂ってるのが良い。
特に気に入ったのは「借り」「秋冬ファッション・カタログより」「イェルヴィル」「公園のベンチ」「ブルーノ」「ハーシェル」。

『時をかける少女』その3(ネタバレ)

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映画館で見たのと合わせて3度目の鑑賞。やはり、いい。
特に最後のタイムリープのところで泣かされる。
ああ、私もこんな青春時代を送りたかったなあ。


今回見直して気づいたこと。
功介たちを追って学校をとびだした真琴が踏み切りに到着したとき、ちょうど左右から電車が来てすれ違う。右側から来た電車は手前の線路を走っている。この時、真琴の周りの人たちは中央の真琴のほうを見ている
時間停止してるとき、踏み切りの真琴のいる側から電車と電車の間をとおして、向こう側が見える。左右の電車とも、踏み切りに進入しつつあるところで、去っていくところではない(手前の線路の電車が右側にある)。この時、真琴の周りの人たちは電車のほうを向いている。服装などから真琴が到着したとき真琴に注目したのと同じ人たちであるのがわかる。


これはおかしい。
けれど、この矛盾も前回私が書いた「踏み切りに到着したあたりから「とまれー」と叫んだあたりまでは真琴が見た夢である」という説を採用すれば問題ない。
真琴が教室に功介を探しに行ったとき、教室の時計は2時50分を指していた。真琴が踏み切りに到着した(時間が停止した)のが3時半。暑い中そんなに走ったのと、タイムリープを繰り返して普段より長い時間活動したのとで、真琴は疲労の極に達していた。そんな状態で事故が起きてないのを知って、ほっとして眠りに落ちたのだろう。


ちなみに私のDVDのおまけのフィルムは、「踏み切りに到着した真琴と踏み切り前の人たち」でした。

映画『時をかける少女』その2(ネタバレあり)

前回に続いて、他人のタイムリープによって無かったことになったはずの出来事を真琴が記憶しているように見える件について。


結論から先に書くと、
踏み切りに到着したあたりから「止まれー!」と叫んだあたりまでは、時間停止中に真琴が見た夢である
と解釈すれば矛盾が無くなる。


時間停止に巻き込まれたショックで(?)意識を失い、その間に見た。
そうなってほしくないという不安や、千昭に対する罪悪感がああいう夢となって現れた。
普通なら、すぐに自分が夢を見ていたことに気づきそうなものだが、目を開けると周りの人がみんな固まってるし、いきなり現れたあの人がわけのわからないことを言い出すしで、気が動転して状況を把握しそこねたのだろう。
さらにあの人との会話で、実際に夢と同じようなことが起きたことを知り、実体験だと思い込んだ。


冒頭にも野球の夢が出てくるし、二度寝三度寝のためにタイムリープしたり、試験中に寝てたりしたのも伏線だったのだ。よく出来てるなあ。


前回の日記に、事故の記憶が無いとダメと書いたが、これならかろうじてセーフかな。

映画『時をかける少女』(ネタバレあり)

9日と15日の二度見た。期待した以上に面白かった。すごくうまい。
見終えて、二度とも幸福な気分になれた。もう一回劇場で見たいなあ(上映終了しちゃったけど)。


タイムリープによって、イベントがキャンセルされてしまうあたり、イーガンの『宇宙消失』を連想した。


二度見てもひとつだけ疑問が残ったが、この一週間ネット上の感想読んだり考えたりして、(自分としては)一応つじつまは合ってると思うことにした。
(以下ネタバレ)

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