『自由酒場』ジヨルジユ・シメノン、伊東鋭太郎・訳(サイレン社『倫敦から來た男』所収)

日本で出版されたメグレ警視シリーズの中で、最も入手困難と言われている本。昭和11年に刊行されて、なぜか同じ年にアドア社から出し直された(書名は『倫敦から來た男・自由酒場』らしい)が、戦後は一度も再刊されていない。『倫敦から來た男』だけは戦…

ピーター・S・ビーグル『最後のユニコーン』の新旧の翻訳を比較してみて、気になったところ(その3)

最後のユニコーン (ハヤカワ文庫 FT 11)作者: ピーター S.ビーグル,鏡明出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1979/10/15メディア: 文庫 クリック: 32回この商品を含むブログ (43件) を見る 訳文がかなり違うところの中でも、特に見過ごせないところ 金原訳と比…

ピーター・S・ビーグル『最後のユニコーン』の新旧の翻訳を比較してみて、気になったところ(その2)

完全版 最後のユニコーン作者: ピーター・S.ビーグル,Peter S. Beagle,金原瑞人出版社/メーカー: 学習研究社発売日: 2009/07メディア: 単行本 クリック: 18回この商品を含むブログ (20件) を見る 訳文がかなり違うところ 当然ながら、金原訳のほうが正しいこ…

ピーター・S・ビーグル『最後のユニコーン』の新旧の翻訳を比較してみて気になったところ(その1)

[ハ]=ハヤカワ文庫2003年10月31日8刷 鏡明訳 [学]=学研2009年7月21日第1刷 金原瑞人訳 原文の引用は特にことわってなければ“The last unicorn” ROC 2008年刊 *=私のコメント 原文そのものが違っているところ [ハ] それを聴いて、カリーは息を呑んだが、…

私的短編小説二十選

「ルーシー」ウォルター・デ・ラ・メア 「スレドニ・ヴァシュター」サキ 「ルウェリンの犯罪」シオドア・スタージョン 「闘士ケイシー」リチャード・マッケナ 「ふるさと遠く」ウォルター・テヴィス 「月の蛾」ジャック・ヴァンス 「青をこころに、一、二と…

私家版世界十大小説その2・SF編

他のバージョンもやってみよう。 『タイタンの妖女』カート・ヴォネガットJr. 『やぎ少年ジャイルズ』ジョン・バース 『エンパイア・スター』サミュエル・R・ディレーニ 『ノーストリリア』コードウェイナー・スミス 『アルジャーノンに花束を』ダニエル・キ…

私家版世界十大小説

『虚無への供物』中井英夫 『狂風記』石川淳 『指輪物語』J.R.R.トールキン 『最後のユニコーン』ピーター・S・ビーグル 『キャッチ=22』ジョーゼフ・ヘラー 『スローターハウス5』カート・ヴォネガットJr. 『シャイニング』スティーヴン・キング 『ウィン…

『時をかける少女』その5、「記憶の矛盾」の一解釈(まとめ)

しつこく「千昭が時間を戻したあと、真琴が数字が0になったことを記憶しているのはなぜか?」について。 冒頭の野球の夢にすでに伏線が張られている。 予備知識無しにこの映画を見た人は、真琴が目を覚ますまでは誰も夢だとは気づかなかっただろう。つまり…

『時をかける少女』その4(ネタバレ)

2ちゃんねるの「時かけ」スレとかを参考にしてFAQを作ってみました。 もちろん、これが絶対正しいというわけではなく「オレ解釈」ですが(特にA5、A7、A10)。 Q1:タイムリープすると、身体ごと時間移動するの?それとも精神だけが移動するの? A1:真琴の…

『空中スキップ』ジュディス・バドニッツ、岸本佐知子・訳(マガジンハウス)

空中スキップ作者: ジュディ・バドニッツ,岸本佐知子出版社/メーカー: マガジンハウス発売日: 2007/02/22メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 38回この商品を含むブログ (55件) を見るこのまま奇想コレクションや異色作家短編集に入ってもおかしくない、ヘ…

『時をかける少女』その3(ネタバレ)

時をかける少女 限定版 [DVD]出版社/メーカー: 角川エンタテインメント発売日: 2007/04/20メディア: DVD購入: 2人 クリック: 193回この商品を含むブログ (435件) を見る映画館で見たのと合わせて3度目の鑑賞。やはり、いい。 特に最後のタイムリープのとこ…

映画『時をかける少女』その2(ネタバレあり)

前回に続いて、他人のタイムリープによって無かったことになったはずの出来事を真琴が記憶しているように見える件について。 結論から先に書くと、 踏み切りに到着したあたりから「止まれー!」と叫んだあたりまでは、時間停止中に真琴が見た夢である と解釈…

映画『時をかける少女』(ネタバレあり)

9日と15日の二度見た。期待した以上に面白かった。すごくうまい。 見終えて、二度とも幸福な気分になれた。もう一回劇場で見たいなあ(上映終了しちゃったけど)。 タイムリープによって、イベントがキャンセルされてしまうあたり、イーガンの『宇宙消失…

買い物

時をかける少女 NOTEBOOK作者: ニュータイプ出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2006/07/01メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 19回この商品を含むブログ (104件) を見る時をかける少女 絵コンテ 細田守作者: アニメスタイル編集部出版社/メーカー: スタイ…

さまよえるユニコーン

巷では、映画『ナルニア国物語』がヒットしているらしいが、『ナルニア〜』と同じ頃に完成する予定だった『最後のユニコーン』はどうなったのかと調べてみたら、まだ撮影が始まってもいないらしい。 wikipedia“The Last Unicorn” http://en.wikipedia.org/wi…

『王と鳥』劇場公開

宮崎駿、高畑勲両氏の“運命変えた”「王と鳥」初公開 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060318-00000037-sph-ent 『王と鳥』の元形『やぶにらみの暴君』は、20年ほど前に新潟市で上映会があって、観たことがある。当時、三条市に日本有数のアニメのコレ…

『どんがらがん』アヴラム・デイヴィッドスン、殊能将之・編(河出書房新社)

デイヴィッドスンは、昔ソノラマ文庫で出てた『10月3日の目撃者』があんまり面白くなかった記憶があるが、これは読んでて愉しい粒ぞろいの傑作集。奇想コレクションの中で一番気に入った。 数年前SFマガジンで読んでデイヴィッドスンに対する認識を改めさ…

伊藤重夫の単行本未収録作品

復刊ドットコムに「伊藤重夫の単行本未収録作品」のリクエストが出ている。需要あるのかなあ。 それよりも名作『踊るミシン』のほうが先だと思うが、こちらですら現在13票。うーむ。これは奇跡的な傑作で、読めない人が気の毒に思えるほどだ。特にポニーテ…

横山光輝『狼の星座・2巻』

3月に回収された『狼の星座』の2巻が修正されて発売された。 修正箇所は215p.の 「まるで屠殺場にひかれるヒツジのようだな」→「すっかりうちひしがれているようだな」 「こじきどうぜん…」は変更なし。 奥付の表記は「2005年3月11日 第1刷発行」…

「ダヤン」ミルチャ・エリアーデ、住谷春也・訳(『エリアーデ幻想小説全集・第3巻』作品社)

数学の天才にして、黒い眼帯をしているせいで“ダヤン”と呼ばれる大学生オロベテは、ある日“さまよえるユダヤ人”を名乗る老人に出会う。その老人は、不思議な力を使ってダヤンの左右の目を取り換えてしまうが、そのためにダヤンは秘密警察から目を付けられて…

最近買った本

『読むのが怖い!』北上次郎、大森望(ロッキング・オン) 『読むのが怖い!』で北上次郎と大森望の間で評価が極端に違う(北上が低評価で大森が高評価)のは、『黒い仏』『ハリガネムシ』『空の境界』『クリプトノミコン』『しあわせの理由』(『グラン・ヴ…

横山光輝『狼の星座』

狼の星座(1) (講談社漫画文庫)作者: 横山光輝出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/03/11メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (8件) を見る今月はじめに、日本人馬賊を描いた横山光輝のマンガ『狼の星座』1・2巻が文庫化されたが、…

『シャグパットの毛剃』ジョージ・メレディス、皆川正禧・訳(学研M文庫『ゴシック名訳集成 暴夜幻想譚』)

大志を抱く床屋の青年シブライは、謎の老女からシャグパットという男の髪を剃ることができれば栄達まちがいなしと予言されてその気になるが、それが天地を揺るがす大闘争を意味するとは思いもしなかった……という、英国製アラビアン・ファンタジー。 この本の…

メタ架空国テーマ作品

メタ架空国テーマ作品というのは、作中で舞台が架空の国であることが明示されているものや、虚構なのか現実なのかはっきりしないもの、夢オチ、作中作の出てくるものなどを指す。 『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』ルイス・キャロル 「トーマス・シ…

『白髪小僧』夢野久作(ちくま文庫『夢野久作全集1』)

昔あるところに、白髪小僧と呼ばれる白痴の浮浪者がいた。ある日、白髪小僧が銀杏の樹の下で昼寝をしていると、溺れかけている少女の悲鳴に起こされた。白髪小僧に助けられた少女・美留女は手に『白髪小僧』という本を持っていて、小僧のことは全てこの本に…

『リピート』乾くるみ(文芸春秋)

『SFが読みたい!』の作品紹介で、『マイナス・ゼロ』や『タイム・リープ』に連なる傑作というふうに誉められてたので買った。それらのように、時間旅行で生じた矛盾のつじつまを合わせるパズルのような話かと思ったら違ったが、意外な展開で、これはこれで…

購入

『リピート』乾くるみ(文芸春秋) 『ゴシック名訳集成 暴夜幻想譚』東雅夫編(学研M文庫) 『SFが読みたい!2005年版』(早川書房) 「本の雑誌 3月号」 『続リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』アラン・ムーア&ケビン・オニール(…

DVD『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 スペシャル・エクステンデッド・エディション』

ついに完結。 劇場で4回見た(おかげで腰を痛めた)が、やっぱり面白い。ペレンノール野での戦いの決着あたりまでが素晴らしい。その後はまあまあ。 追加シーンの目玉は、サルマンの最期と、ガンダルフvsアングマールの魔王だが、コミカルなシーンが増えて…

長門有希の100冊

長門有希に挑戦!をやってみた。結果は34冊。 ダン・シモンズ『エンディミオン』 有栖川有栖『双頭の悪魔』 京極夏彦『魍魎の匣』 とり・みき『クレープを二度食えば。』 筒井康隆『バブリング創世記』 バリントン・J・ベイリー『時間衝突』 グレッグ・イー…

『メグレの回想録』ジョルジュ・シムノン、北村良三・訳(早川書房『世界ミステリ全集9』)

メグレのモデルになった(という設定の)“本物のメグレ”による回想録。シムノンの描写や、映画の配役に対して文句をつけてるのが笑える。 ほとんど小説内のメグレと同一人物と見なして差し支えなさそうだが、わざわざメタな手法を使ったのは、小説に描かれる…