『アリスの教母さま』ウォルター・デ・ラ・メア、脇明子・訳、橋本治・絵(牧神社)

収録作品:「謎」「お下げにかぎります」「ルーシー」「アリスの教母さま」


アンソロジー・ピースの「謎」が名作なのは当然だが、「ルーシー」もそれに劣らぬ傑作。「お下げにかぎります」も面白い。「アリスの教母さま」も悪くない。
主人公にしか見えない少女の話「ルーシー」は、デ・ラ・メア作品らしく良くわからないオチがついているけれど、何故か泣けてきた。
自分には行方不明の娘がいるという妄想に取り付かれた金持ちの婦人が、お下げ髪の孤児の少女たちを集めて引き取る「お下げにかぎります」は、主人公が普通とは異なる時間を生きているところや、来世への希望を示しているあたり、エリアーデの小説を連想した。
訳者は前書きで、女の子のお話を集めたと書いているが、“老い”をテーマにした作品集というふうにも読める。


橋本治のイラストも良い。橋本治が他人の本のイラストを描いてるのは、めずらしいんじゃないかな。同じ作者・訳者の『ムルガーのはるかな旅』(ハヤカワ文庫FT)のカバーも描いているが、あちらはイラストなし。